ゲーム音楽を作ってみたよ(2時間で)

ぼくは昔ゲーム音楽、それも冒険モノっぽいやつを作りたいなーと思ってたことがあって。
というか今でも思ってるんだけど。

そんな気持ちを抱いていたところ、いつもの2時間DTMのテーマでこんなのが上がってました。

やーこれはやってみたい。
ゲームのボスとかフィールドっぽい曲って
ロックだったりオケだったりトラッドという体で、
何となく作ったことはあるけど、
ザコ戦BGMって通常の人生においてまず作らないですよね。

作りました

出来たのがこちら。

お題に気付いたときに既に開始の22時を回っていたので、アップが少し遅くなりましたが
制作時間は大体いつも通りの2.5時間でした…。

で、今回はいつになくこの曲に対する反応があったので、
もしかすると制作に関して興味ある人がいるんじゃないの?

という思い込みの下、
制作時のフローを記憶を辿りつつ順に書いてみました。

ザコ戦のイメージを膨らませよう(所要時間5分)

ぼくはバイオリン前提の制作なので、『バイオリン入りザコ戦BGM』っていう脳内の引き出しをまず開けます。

アンリミテッドサガとFF13は鉄板ですね。あとはぼくが昔好きだったファントムブレイブの曲。
他にもバイオリン入ってるザコ戦っていっぱいあると思うけど、ぼくの中ではこの3曲。

その他に戦闘曲としてFF戦闘曲全般だったり
DQ4の『生か死か』も頭に置きつつ、
ざっくり膨らませたイメージが

  • メロディをゲームのテーマアレンジっぽい感じにする(アンリミテッドサガ、FF13)
  • とりあえずAパートは刻む(FF全般)
  • アコギを入れたい(アンリミテッドサガ、ファントムブレイブ)
  • バイオリン以外に笛などのメロディ奏でられる楽器を入れる(ファントムブレイブ)
  • ラテンとかアイリッシュとか、メロディにちょっとトラッドっぽさがほしい(ファントムブレイブ)
  • 戦闘が長引いた時の強敵感を演出するためのサビを作る(FF13、DQ4)
  • サビに入る前にユニゾンっぽいのを入れる(DQ4)

というもの。
こうやってリファレンスにもとづいて制作する感じが劇伴制作っぽい(ぼくのイメージです)。

で、いよいよ手を動かして作ります。

まずテーマメロディを作るよ(所要時間3分 計8分)

まずはメロディを『ゲームのテーマアレンジ』っぽくしたいので、
何となくシンプルなメロディラインをピアノで構築。

今回はAパートのメロディがそれで、トラッドっぽいニュアンスでドリアンモードにしました。

まあ、「意図的にしました」というより
パッとイメージに基いて弾いたらそうなった、だけなんですけど。

拍子は意識せず弾いたので6/8ぐらいになってるかな、
と思ってカウントしたら5/8に着地してました。
ザコ戦でこの拍子はあんまり一般的じゃないなーどうしよう…
と思ったけど時間ももったいないし。

まあいいや、次にいこう。

Intro〜Aパートを作るよ(所要時間5分 計13分)

メロディと同時にほぼAパート伴奏の刻み方は出来てしまっていたので、
コード進行を決めました。
引き続きピアノを弾きながら。

Bm9 – Bm9 – GM7 – A6

まあ、淡々としたほうが良さそうだなと思ったので、ドリアンの部分ではEメジャーにせずBmで淡々と。
Bmはテンション重ねてBm9としました。

この辺も意図的ではなく、流れでピアノ弾きながら出てきた、という感じでしょうか。

この制作作業以降はリアルタイム録音でメトロノーム鳴らしながら録ってます。
普段は最初に仮ドラムを入れるんですが、
割と刻み方のイメージが既に出来上がっているので省略しています。

Bパートを作るよ(所要時間10分 計23分)

Bパートはコードで押すんじゃなく、
サビに至る前にユニゾンでグイグイ来る感じにしたいので
今までと刻み方を意識的に変えるような、シンコペーションフレーズを
思いつきで幾つか録りながら弾いてみます。

このときはコードは全く決めません。右手のメロディのみ。

どうせなら変拍子にしたいなーと思ったんだけど、
5/8をさらに変拍子にするのはめんどくさいので、
シンコペーションで変拍子っぽくしておきながら
適当に小節の辻褄を合わせてます。

5/8×3小節でひとかたまりになってますが、
3小節の区切り、というのはたまたまそこで区切れた、というだけで
音楽的な意図はないです。

Bパートのメロディが決まったらコードも当てます。
ノンコード的な雰囲気から徐々にコードを当てていくという鉄板の進行にします。

先に録ったメロディを見ながらここだというタイミングで
左手のコードを入れていきます。
あんまり進行は考えず、なんとなく辻褄合うように入れていきます。

この行き当たりばったり感は2時間DTMならではですね。

このBパートとサビを繋ぐブリッジは勢いでAパートの延長にしました。

サビを作るよ(所要時間5分 計28分)

サビはもうキャッチーなIV -V – I 的進行で決め打ちです。
ぼくがよく使う進行を流用します。

G – A – F# – Bm – C#m-7 – F# – Bm – Am – D7
G – Gdim7 – F# – Bm – G#m – G – A

G#mを入れてハッとさせときます。この響きはBパートでもちょっと使ってますね。

サビはキャッチーにしておきたいので拍子は5/8を諦めて6/8にしておきました。
ここは意図的な拍子切替です。

この時点ではサビのメロディは作りません。
バイオリンでアドリブがてら決めることにします(時間もったいないので)。

サビのあとはまたIntroにループさせるため、5/8に戻してAパートの刻みにします。

ここまで録ったピアノは後の録音のためにここでクオンタイズしておきます。
このピアノはガイドトラックなので最終的には使いません。

ドラムを作るよ(所要時間15分 計43分)

みんな大好きSuperior Drummer 3です。

ドラムはリアルタイム入力ですが、手順としては

  • メトロノームとピアノを聴きながらキック・スネア・タムを弾く
  • その後に金物を弾く
  • クオンタイズ

です。

Aパートは淡々としたいので、なるべく手数は少なく、ハイハットで刻みます。

Bパートは自分でもビート感がわかってないので
何となく弾いてみて違和感がなければOKとしました。

サビパートはAと対照的にスネアをしっかり入れてライドで刻みます。
特にキメを入れる感じでも無さそうだったので割とスルッと作ってます。

ギターを作るよ(所要時間15分 計58分)

ピアノで作ったパターンをギターのコード弾きで再現します。
いつも通りSunbirdのコードモードを使ってまずコードを白玉でサクッと録ります。

録れたらストロークパターンをマージ録音します。
Aパートは刻みたいのでカッティングを入れてキレの良さを演出しましょう。

クオンタイズをかけたあとに少しノート全体を前にずらします。
Sunbirdはコード解析などで時間がかかるっぽいのでジャストな打ち込みだと遅れてきます。

ベースを作るよ(所要時間5分 計63分)

仮ピアノの左手を参考にベースを録ります。
スライドのピッチベンド含めてサクッと録ってしまいます。

本番ピアノを作るよ(所要時間5分 計68分)

本番のピアノを録ります。
仮ピアノのときに比べると、刻みやコード感を他の楽器で維持できるようになったので、
少し自由めに弾きます。

今回はピアノがそこまでメインにならなさそうなので、
あんまり気合の入ったことはしません。

ここでほぼ曲の根幹は出来たな、と思うので、
補強していきます。

ストリングスを入れるよ(所要時間10分 計78分)

サビの薄さが気になったのでコードを弾くためのストリングスを録ります。
シンセストリングス的にパッとコードを押さえるのみです。

軽いシンセストリングスにすればもっとロード早いんだけどなーと思いつつ
出音の想像しやすいSession Strings Proのセクション系を選びます。

デフォルトのLegatoではなく、アタックの早いAccentをロードしておきます。

チェロを入れるよ(所要時間10分 計88分)

バイオリンを補うための楽器を入れようと思ってフルートなどを候補に出してみたものの、
ここまで出来上がったサウンドを聴くと割とクールな感じなので、
エッジのある楽器のほうが良さそうかな。

ということで、ライブラリの上の方にあったチェロをチョイスします。
このチェロ音源、実はほとんど使ったこと無いので適当にロードします。

キースイッチの動作を確認しつつ、MWでビブラート+弓圧、
スピカート時はディケイをコントロールできることがわかったので、
リアルタイム録音で弾いていきます。

メロディは未定の部分もあったけど、たぶんバイオリンでこう弾くだろう、
という予想に対してカウンター的に弾いていきます。

ちなみにこの音源もレガート解析時間がかかるため、録ったあと前にずらしています。

インダストリアルなパーカッションを入れるよ(所要時間5分 計93分)

最近のゲーム音楽っぽい金属系のパーカッションを入れることにしました。
適当にプリセットをロードしたら適当に録ってクオンタイズ。

FMシンセを入れるよ(所要時間5分 計98分)

サビがまだ寂しいのでキラキラした音を入れるためにFM8をロード。

最近ちょくちょくFMの音作りを試してるんだけど、さすがにここからFM音作りは無理なので、
プリセットから合いそうなのを選びます。
サビに入るところから駆け上がってコードを鳴らします。

ようやくバイオリンを録るよ(所要時間15分 計113分)

ようやくバイオリンのターン。もう時間ないので3テイクだけ録ります。
録音準備だけで5分くらいかかる…。

Cパートのメロディがまだ決まっていない(脳内でうっすら入り方だけ決まってる)ので
3テイクアドリブで弾いて、良さそうなやつを選びます。
2時間DTMではだいたいこんな感じで弾いてます。

トラック名がDelayなのは前に作ったオーディオトラック名を
変えずに使っているためです。
Studio Oneのこの機能、あんまりありがたくないんだけど…。

で、ここまで出来たら2ループのゲーム音楽っぽくするために
全トラックを後ろにもコピペします。

ミックスするよ(所要時間15分 計128分)

ここで2時間をオーバーしますがロスタイムということで…。
ミックスはNeutron2のプリセットをがしがし挿していきます。

プリセットでコンプとか効きすぎてしまうところは
スレッショルドだけ視覚的に調整して、さらにWetの割合を減らします。

ピアノにはGullfossEQを挿してみました。

少し硬めのピアノにするためにサクッと。こういう使い方も出来るGullfoss、めっちゃ優秀。
同時にいろんな帯域をバランス取ってくれるので、
即座に最終の音が確認出来て掛けすぎることがないですね。
普通のEQで音を作ろうとすると、ある帯域を触って他を触って…
ってやるので、結構しんどいです。

上モノリバーブはH-ReverbでLexicon 480系のプリセット。
これがめっちゃ良いんですよね…。

今回は結構リバーブに送ったなーと思ったんだけど、心地よい。
調整しなくてもスッキリ深いリバーブに出来るので2時間DTMの強力な助っ人になります。

マスタリング〜アップロードするよ(所要時間20分 計148分)

完全にロスタイム使い果たしてますがマスタリングします。

今回試しにGullfoss EQをうっすらマスターにも入れてみます。

それからOzone8のプリセットを適当に選んでコンプとマキシマイザーを消します。
で、ステレオイメージャーを追加。
設定は適当に低域を狭く、高域を広げてます。

コンプとマキシマイズ、ディザリングはFG-Xでやってしまいます。

コンプのかかりぐらいをメーターで見つつ、マキシマイズもメーターで適当に。

これを書き出してアップロードして完成。
アップロードしてツイートするのも意外と時間かかります。

トータルで大体2.5時間ですね…。

所感

今回はリファレンスを結構意識した部分もあって
オリジナリティがちょっと欠けたかなーと思うけど、
そのぶん安心感ある曲になったなあとは思います。

普段の制作でもこれくらい安心感出せるようになりたいなー。

3月、なにも音楽制作やらずに終わりそうだなーと思ってたけど、
何とかコラムのネタになりそうなDTM活動ができてほっとしました。

オマケ:これまでに作ったゲーム音楽っぽい曲

今回のザコ戦。

ボス戦。これは2時間DTMで作ったやつを加筆修正したやつです。

ダンジョン?

ダンジョンかな。