メロディの修正について考えたよ

こないだ公開した曲のメロディ、「風の憧憬っぽくない?」という指摘を受けまして。

サビの入り方はちょっと似てるかもなーというふわっとした認識のまま作ってたんだけど、あらためて風の憧憬を聴いたらサビの2小節目が思っていた以上に一緒だったのに気づいたので、ちょろっとメロディを変えました。

で、思ったのが

  • 入り方のところは気にしてたのに何で2小節目の方で気づかなかったんだろ
  • この手の話って意外と無自覚に起こりうるんだな

ということ。せっかくなのでちょっと掘り下げてみようかなと思います。

意識してたところ

入りのここ。風の憧憬っぽさを自分で意識してたところですね。

というのも昔ぼくが風の憧憬をアレンジしたとき

原曲で『ファミドラ』のところを素で採譜ミスして『ファミラド』にしてたんですよね。これはアレンジしてから気付きました。

なのでぼくにとっては『ファミラド』というのは風の憧憬から生まれたオリジナルの音の動きだと思っています。なのでこの曲で『ファミラド』を使ったときに、「あ、風の憧憬のアレンジのときに間違って作っちゃったフレーズだ」と認識してました。

こういう音の流れの違いによって、続く『レ』の音の持つ意味が変わってくるので、感覚的には「似てるけど音階のエネルギーが違うフレーズ」と捉えています。
逆にこのときは「これは風の憧憬アレンジとしてはやっちゃいけない失敗だ」というくらい別物の感覚でした。

厳密に言うと、アレンジのリハーモナイズの観点からすると、音階の流れは『ファミラド』で正解だと思いますが、原曲を破壊しちゃった感はあります。

意識してなかったところ

さて問題の次の2小節目。ぼくの曲の旧譜面だと

いやーこれ、全然気づかんかった。なんでだろう。確かにこっちのほうは風の憧憬のまんまだ。『ドラファソラ』って。譜面からするとぼくもダメだなと思う。
じゃあなんで気づかなかったのか。これを自己分析してみました。

(1) フレーズの呼吸

風の憧憬は割と小節線でフレーズを区切るように発音してる(ゲーム音源だからね)のに対して、ぼくの曲では割と息継ぎのタイミングをみてシンコペーション的に捉えてたんですよね。3小節目以降続くフレーズもそういうように作っていたので。

こんな感じで赤丸で囲ったところが同じフレーズの形状で呼応してます。なので作っているときはこの『ドラファソラ』を単体で捉えてなかったし、演奏もスラーで小節またぐようにしてました。
ここがたぶん盲点の一つかなーと思ってます。反省。

(2) セクションのピーク

次にセクション全体のピークのあり方かなと思います。

風の憧憬はAメロで一音一音を噛みしめる感じなんだけど、入りとして2小節の持つ強さが高く、この2小節がセクションのピークだと思います。もともとAメロなので大きなピークではないにしろ、そこが一番メッセージ性の強い箇所かな。

一方、ぼくの方はというと、この2小節はセクションとしてはそこまで大きな意味を持っていなくて、サビのこの赤丸のところがそれぞれのフックだったりピークになっています(したつもり)。

なのでぼくの曲においては『ドラファソラ』ってあまり強さが無いんですよね。サラッと流してしまって、どちらかというと第1ピークへの布石でした。なのでこのフレーズに関しては、音選びそのものよりもシンコペーションでどうつなげるか、という視点で考えていました。
これが盲点のその2。

(3) こだわりの強度

ぼくのこの曲で一番こだわりが強いのがBメロなんですよね。
この肝入りのコードとメロディ。

Cm > F7+9 > B♭M7 > E♭M7+9 > Em7♭5 > Dm > G7 > C
Cm > F7+9 > B♭M7 > E♭m7+9 > A(♭5) > C7 > B♭ > A

これが「誰かの曲を無意識に真似てないかな」という心配がありました。結構こだわって考え抜いたつもりが聴いたことある何かと被ってないか、と。特にこの手の流れだと坂本龍一やYMO、Jazztronik、Schloder Headzなんかにありそうかなと。なのでこのあたりの聞き覚えのある曲は一通り聴いて被ってないことを確認したりするくらい、念入りに見てました。

逆にサビは王道コードにしてたので、気にしてもしょうがないかな、くらいに捉えてました。
この甘さが盲点のその3。

是正処置

別に直さなくても良いレベルとは思うもの、自分で気になってしまったのでメロディを是正しました。

最初の作曲の意図からするとちょっとフレーズの意図が変わってしまったのは否めない代わりに
サビのピークとフレーズを揃えることで、パッと聴きざわりは統一感が出ていると思います。
スコア的には前のほうが音楽的な流れだったかな……と思いつつ、自分でも気になってしまった以上はこっちにしとこうかなと。

是正したポイントは最小限ですが、性質的にはこれくらいで「似てる」と感じるところから脱してるのでは、と思います。

予防措置

これはもうシンプルに、『バイオリンインストにもう少し傾く』です。

今回、割とバイオリンインストから距離を置くつもりの作曲をしてたんですが(Bメロとサビ)、こういう作り方だと音楽的な正解に寄り過ぎて、ともすると既存の作曲家の曲に寄っちゃうんですよね。特にピアノとかで作っちゃうとそうなりがち。

なのでなるべくバイオリンの手癖を織り交ぜることを意識していくべきかな、と。

普段のぼくの曲ってバイオリンでメロを作ることが多いので、音の流れが自然と独特になりやすいんですよね。音の跳躍とか反復の仕方とか。ギタリストがペンタのフレーズを織り混ぜる感覚に近いかも。特にバイオリンは四度や六度を弾きやすいので、ハーモニーから少し逸脱した独特のフレーズを入れやすいんですね。あとは装飾音とか。

とはいえ、それをやりすぎると少しトリッキーだったり技巧的に聴こえてしまい、音楽的な良さから少し離れがちにもなるので、うまくハイブリッドでやるべきだなと実感しました。今回もAメロはバイオリンインストっぽさを混ぜてはいますが、セクションごとに混ぜるのではなくもっと曲全体で柔軟にやったほが良いかなと思います。

ということで、なかなか自分の良い振り返りにもなりました。